地域の「住宅のかかりつけ医」であるべし

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■ ”住宅医”という新しい概念 ■

医療の世界では「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」を「かかりつけ医と呼んでいます。

これ人間じゃなくて建物に置き換えたらどうなんだろうって考えました。
言い換えると次のようになります。

住宅のかかりつけ医とは「”住まい”に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の施工者を紹介出来る身近にいて頼りになる”建築士”のこと」
これが「住宅医」という概念です。

ですがこの「住宅医」という言葉、念の為調べましたら一般社団法人住宅医協会◀さんが主催する資格制度でこの言葉が使われているようです。登録商標ではないと思いますが敬意を表して混乱を避けるためにも、このサイトでは「住まいのかかりつけ医」と呼ぶことにします。

企業案内にも載せたんですが私が現在所持している資格で「住まいのかかりつけ医」として役に立ちそうなものは以下のものです。
■二級建築士
■宅地建物取引主任士
■木造住宅耐震補強診断士
■既存住宅状況調査士(インスペクター)
■応急危険度判定士
しかしなんと言っても重要なのは住宅の建築現場で培ったノウハウであり、エラーアンドトライの30年以上の経験だと思うのですよね。

■ 消費社会を見直そう ■

こういうふうに「住まい」というものを擬人化する考え方って戦後の我々はあまりしてこなかったんじゃないでしょうか。

日本は戦後急速に経済復興するなかで人間の入れ物をどんどんと新しく作り直すことを推進しました。国策としてハウスメーカーを保護育成することによって家造りを工業化し、新しいことはいいことだという共有価値観を作り上げてきたのです。消費することで社会が豊かになっていくという共同幻想です。この政策は成功して日本は経済的な豊かさを手に入れることができました。

そして、日本の隅々にものが行き渡り、さらに人口が減少に転じると、そういう価値観の中での生き方を見直す機運が高まってきました。我々は「働き方改革」をなんとなく受け入れようと努力をはじめたのです。ところが空回りするばかりでうまくいきませんでした。そこへ全く予想もしていなかった災禍が襲ったのです。

コロナ禍という未曾有のパンデミックは我々の固定観念をリセットする機会を与えてくれました。世界をグローバル化して消費することによって経済を拡大していくことに自分を生きるという観点で意味があるのか。

25年毎に住まいを建て替えるよりも、お気に入りの建物を建てたのちは家族の変化に合わせて少しずつ造り変え、あるいは手直しを入れながら次代へ住みつなぐことが大事であると、我々はみな心のどこかで感じています。

■ 環境を配慮したサバイバル生活 ■

建物と自分の実人生の長い歴史の中ではやはり建て直すことが必要なときもあります。それもまた良し。でも私はこう思ったのです。自分はこれからは住まいのかかりつけ医になろう。古い建物のいいところを残して、住まう人が寄り添う素敵な住まいに少しづつ作り変えていこう、そしてそれを維持するお手伝いをしていこう。

これからの時代は、環境への配慮から賞味期限を過ぎても食べる、古い家を活用する、出来る範囲で自給自足してみる、などという行動が増えてくるはずです。ある種、サバイバルのための知識が必要になる時代。ぜひとも、住宅のかかりつけ医の知恵を活用してみて下さい。